2007年12月14日 (金)

接客業が不人気の訳

根本的に間違っている。(元ネタ痛いニュースより

人と話すのが嫌いな若者達は増えているのか

 仕事で、飲食店を経営をされている方たちのお話を聞く機会があった。その内容は、「経営」についてだった。

 「ここ数年、求人広告をだしても反応がありません」と彼らはいう。

 求人広告に、店の「求人案内」を載せても、応募をしてくる人が極端に少ないようなのだ。数年前までは、反応率というのは高かったらしいのだが、ここ数年は、反応がメッキリ減っている。問い合わせが、ゼロという場合も珍しくはないと言う。何故だろうか?

 一方、別の、某ホームセンターで働いている友人と話しをする機会があった。飲食店では求人広告を出しても人が来ないという話しをすると、

 「そう? うちは応募をかけると、反応は出るよ。採用基準に満たすか、満たさないかは別として、求人広告を出せば、必ずと言っていいほどに問い合わせが来るけどね」

 飲食店経営の方たちは、こう話していた。

 「若い人たちは、接客をするというのが、嫌いな傾向にあります。確かに、接客というのは大変な仕事であり、人と人が交じ合わなければならない部分があるので、大変さは分かります。どうも、最近の傾向は、若い人がその交わることを避けている風に感じます。事実、接客業よりも、工場や、ホームセンターなどで、あまり会話を必要としないで働ける方に人が集まる傾向もあります」

 要するに、「接客業」よりも「無接客業」を選ぶ傾向が強いそうだ。

 前述のホームセンターに勤務する友人は、最近入ったアルバイトの子に頭を悩ませていたらしい。レジを担当していたのだが、接客の対応に不手際が目立った。採用直後、たった1週間でその子は、辞めてしまったそうだ。理由は様々だろうが、「接客が苦手だったのではないか?」と友人は話していた。

 接客が苦手・嫌いとはどういうことなのだろうか? 人と話すのが怖いのだろうか?

 ホームセンターでも、お客との接点は必ずある。店内案内などの時は否応なしに、客との応対が求められるからだ。興味を持った私はその夜、時間を見計らって、その友人の働くホームセンターに足を運んで、生の現場を味わってみた。

 ペンキ類の場所が分からない、と店員さんに尋ねてみた。

 店員さんは、学生のアルバイトらしき風情だったが、単刀直入に言って「対応が悪い!」のひと言だった。友人の話しを聞いていた分、意識しすぎてしまった面はあるかもしれないが、それを差し引いても、対応の悪さが目についた。

 対応の悪さをひと言でいうと、お客の「目を見ない」点にある。私は、接客というのはお客の視線に合わせ、目と目で話すところから始まると思っている。接客以前に、それがマナーではなかろうか。態度や声が大きさよりも、まず相手の目を見る事が重要で、その次に会話が始まると思っている。

 誰でも、目を合わせないで話しをされると、印象を酷く悪くしてしまう傾向がある。故意であろうがなかろうが、視線がぶつからないと、話も伝わらない上、話す意欲がなくなってくると思う。

 接客は、確かに簡単なことではない。人と人が基準にあるがゆえ、ちょっとしたことにクレームなどがつくことも多くある。飲食店経営の方たちと、ホームセンター勤務の友人の2つしか事例はないが、どうも、若い人たちが、接客が苦手であり、嫌いだというのも頷ける部分がある。

 「人と話すと大変じゃん? 無言で仕事してた方が楽じゃない? それで金もらえれば楽じゃん!」

とそんな声が、聞こえてきそうだ。

 だが、接客だからこそ、面白い部分がたくさんあることも事実なのだ。人との繋がりが生まれ、交友関係も広がり、また、人から学ぶことが多くにあるのではなかろうか?

2007-12-12 11:40 ohmynews

 接客業に人が集まらないのは、別に接客が苦手な人間が増えたからではなく、元々正当な報酬を受け取っていないからだ。つまり、割が合わない。現在の人員不足は、それが若年労働人口の減少と共に顕著化してきただけにすぎない。

 米国では一般的にウェイターやウェイトレスは州の最低時給で働いている。なぜなら、彼らの主な収入源は時給ではなくてチップだからだ。

 日本の主な飲食業はすべからくこの米国のシステムを模倣して発展してきた。しかしながら、米国はチップを受け取り、日本はチップを受け取らない。この違いは決定的だ。

 米国の外食産業はチェーン展開する段階において作業を標準化し、それをマニュアル化することによって発展してきた。そしてその発展の過程において多くの企業が淘汰されてきたが、産業全体にこの標準化された人材を多く蓄積することによって、後の爆発的な発展に繋げていった。

 しかしながら、日本においては、飲食業で人材を募集した場合、経験者が再び募集してくることは極めて稀だ。なぜなら、彼らはこの仕事が割に合わないことを骨身にしみて理解しており、店舗営業とは人員不足との戦いであることを既に経験しているからだ。

 米国の飲食業では繁忙店への異動や店長への昇格は歓喜すべき栄転だが、日本の飲食業にとってはこれはもはや死刑宣告に近い。

 日本の外食産業は現在、自転車操業の状態にあるといえる。今は高い離職率を必死の採用活動で補ってはいるが、やがて少子化が進行し、若年層の就労人口が減少するに従って、必ず破滅はやってくる。

 キッチン作業であれば、オペレーションシステムとマニュアルがしっかりしてさえすれば外国人労働者でも代用できる。しかし接客はそうはいかない。主に接客を担当する彼らは、長い経験とともに特殊な能力を備えた純然たる接客のプロだからだ。

 実際に米国の飲食業においても、特に西海岸ではキッチン作業者のほとんどがヒスパニック系で締められている。キッチン内ではスペイン語が飛び交い、それによって従来そこで働いていた黒人が職を失うという社会問題すら引き起こしている程だ。

 一方、接客担当者を見ればほとんどが白人であり、高い教養を備えている場合が多い。そして、この傾向は繁忙店であればあるほど、客単価が高くなればなるほど顕著化している。

 彼らは、接客を担当した10~25%をチップとして受け取っている。一日に100万売り上げれば10~25万のチップが支払われることになり、仮に10人で勤務していれば時給のほかに1~2.5万の収入があることになる計算だ。

 仮に日本で同じ額を時給で支払えば店は成り立たない。なぜなら、彼らに支払うべき原資を客が支払っていないからだ。つまりは日本の飲食店を利用する客が支払う対価にはサービス料が含まれておらず、今までサービスと思ってきたものはすべてアマチュアによる自主的な笑顔や気配りでしかない。だからマクドナルドのメニュー欄にはわざわざスマイル0円と記入されているのだ(今はどうか知りませんが)。米国のファストフードの従業員にスマイルは存在しない。

 それが日によって違ったり、人によって差があるのは当たり前。それに文句を言うのはお門違いもいいところだ。接客担当者は奴隷ではないのだから。

 ならば、商品を値上げして一律的に時給アップをすれば解決するかというとそうではない。あくまでチップとはサービスによる対価であり、時給によって支払われるべきものではないからだ。価値を伴わないサービスに対価を支払う客は存在しない。そんなことをすれば、産業全体が衰退してしまうだろう。

 唯一の解決策は、日本にもチップに類した制度を導入し、今からでも接客のプロを業界全体で育てる努力をすることだ。一律3%でもいい。サービス料的に加算してそれを接客担当者に分配すれば結構な額になるだろう。

 しかしながらそれには相当な困難が伴う。なぜなら日米の文化的な違いもさることながら、長年続いた慣習により、接客担当が縦割りではなく、横割りで割り当てられており、サービス料として割り当てた3%を分配することが不可能だからだ。

 米国では、席に座ってからデザートを食べて会計を済ませるまで1人が接客を担当する。そしてその担当者は、能力に応じて任されたテーブル数や客が注文した料理の単価によってチップ収入が変化する。

 つまり、テーブルを多く担当し、尚且つ回転率を上げれば上げるほど、追加注文を取れば取るほど収入が上がるわけだ。そりゃ頑張らない方がおかしいさ。

 しかしながら日本においては、最初から最後まで1人の担当者が担当することは極めて稀だ。多くの場合、案内係、水出し係、注文係、料理運び係…などなど、その作業に応じて人数を配置する場合が多い。そして多くの場合、各テーブルがどのような状態にあるかを理解するものは店に一人も存在せず、水出しや料理運びなどの多くの能力を必要としない作業者にクレームが集中する。

 これはある意味、能力のばらつきを横割りで解決しようとした苦肉の策だといえる。しかしながらここを変えなければ日本の飲食業の未来は無いだろう。

 もう一つ言えることは、元々飲食業界そのものが新しく、強力なロビー組織を持たないことだ。たとえば、サービス料3%を加算する如きは日本の社会システムを根本から変化させるような行為であり、その実現には政治的な手当てをも必要とするであろう。しかしながら、現在の労働組合すらない状態ではこのような政治的な働きかけをすることは不可能に近い。

 いずれにせよ現在の状態では近い将来、必ず飲食業界は破綻する。私達の子供達の代には中国辞書を持って食事に行く日が来るかもしれない。もちろんその時、まともなサービスはもう期待しない方がいいだろう。注文どおり料理が運ばれてくれば御の字だ。

 

人気ブログランキングへ

| | コメント (5) | トラックバック (4)

2006年12月 1日 (金)

チップとは

すかいらーくが上場廃止したようです

すかいらーく、9月19日付で上場廃止…東証

 東京証券取引所は18日、経営陣による自社株の買収(MBO)の実施を正式に決めた外食大手のすかいらーく(東証1部)株式を、9月19日付で上場廃止すると発表した。

今月19日から上場廃止を投資家に周知させる「整理ポスト」に割り当てる。

 すかいらーくが18日の取締役会で、MBO実施のため、投資会社の完全子会社となることを正式に決めたことから、上場廃止基準に抵触した。

(2006年8月18日19時51分  読売新聞)

 すかいらーくは1970年に創業したレストランチェーンです。日本より20年は進んでいるといわれる米国のレストランチェーンを手本として、全国にチェーン展開を進めて大成功を収め、日本を代表する企業へと成長しました。

 しかし、すかいらーくが米国を手本としながら、導入しなかったものがひとつあります。

 それは“チップ”です。

 改めて“チップって何?”と聞かれると、いまいちわからないものです。米国を例にとって“チップ”の役割について説明します。

 米国においてチップは、サービスの対価として渡すもので、テーブルサービスを行う店では必ず払わなければなりません。払わないと訴訟を起こされて大抵負けます。(カウンターで商品を注文し、受け取って自分で片付ける店では払う必要はありません。ここでいう”サービス”とはファストフード店でやること以外と考えてください。)

 米国におけるレストラン業では、サービスを行う”サーバー”と呼ばれる人たちは大抵の場合、州の最低時給に近い時給で雇われており、収入の多くをチップに頼っています。

 レストランでは各テーブルごとの担当が決まっており、ファーストオーダーから、会計までひとりのサーバーが担当します。彼女(彼)らは、能力が非常に高く(100名前後のお客の名前を覚えるのは当たり前。忙しい中でも常に笑顔を絶やさずキビキビ働き、推奨販売もキッチリこなします。)コーヒーショップでは5~8卓、ステーキハウス等、やや高級な店では、3~5卓担当するのが一般的です。

  コーヒーショップにおいて、忙しい時間帯だと客席は1.5回転ほどします。一卓当たり4名座ったとして計算すると、一人で8卓担当した場合には一時間に48名を担当することになります。この場合のチップ収入は一人1000円食べたとして、10%で100円、48名分で4800円にもなります。すでにキャバクラの時給より高いですね。

 これがステーキハウスならどうでしょう。やや回転数が落ち、担当するテーブルが3卓、一時間10名ほどになりますが、その分客単価が2500円ほどに増え、チップも20%ほど貰えるので一人当たり500円、10名分で5000円ほどになります。

 米国のトップチェーンでは年商7億売る店(もちろん、メインはハンバーガーです)も存在し、そういった店ではチップ収入だけで年間1億以上にもなります。無論、そういったお店で働いているサーバーは大学生等、教養の高い人材が多く、みなさん美男・美女ぞろいです。

米国においてレストランサービスは割がよくて魅力的な仕事なのです。

 一方で、不明瞭なチップ制度が、経済に悪影響を及ぼすという考え方もあります。次はチップの果す経済的な役割についてお話します。

チップの経済的な役割ですが、やはり一番にあげられるのは、働くサーバーと、企業の目的が共有されるということです。

 レストラン業において売上とは、客数×客単価です。客単価はレストランの業態でほぼきまってくるので、企業の営業目的は客数の増加に絞られます。一方、働くサーバーの収入も客数×(客単価×チップ率)で決まります。チップの額も客単価=レストランの業態でほぼ決まってくるので、サーバーの目標もやはり客数の増加に絞られるのです。

 そして客数=収入ということになれば、忙しい時間により多くの人員を配置できます。レストラン業は時間帯ごとの客数の増減が大きく、時給制ではピーク帯の人員が確保できないという構造的な欠陥を持っていますが、チップ制はそれを補ってくれるのです。

 そして、客数で収入が決まるということは、忙しい店ほどよい人材が集まる店になります。そしてさらに客数が多く人気が出れば出るほどさらにいい人材が集まり、さらによい店になってお客もさらに満足するという相乗効果を生みだしていくのです。

 また、チップ制は分かりやすい能力主義と成果主義でもあります。サーバーはその能力によってより多くの卓をまかされ、チップという成果を受け取ります。そしてその与えられたポジションで客席の回転数を上げ、そしてさらにいいサービスをすることでリピーターを増やし、その結果、増えた客数×チップという成果を受け取ることが出来るわけです。実際、出来るサーバーはチップ収入でプール付の家を建てることも夢ではありません。そして経験があるサーバーは60過ぎてもなお現役でやれるのです。

 チップはレストラン業への人材の供給と蓄積を生み出し、業界全体の利益となっているのです。

 時給制で働く日本では考えられないことです。時間=収入である限り、いったん入社してしまえば頑張ってる人も頑張らない人も、店が繁盛しても繁盛しなくても得られる収入は一緒(時給の差は出ますが誤差の範囲内です)です。その結果、企業の目的と働く人の目的を共有することは難しく、勢い精神論が幅を利かせることとなります。

 もちろん日本でも良いサービスを受けることは出来ますが、彼ら(彼女ら)は偉大なアマチュアであるといわねばなりません。良いサービスをしながら、サービスで収入を得られず、また、よいサービスで店の人気を上げても、収入が増えるわけでもありません。忙し過ぎる店は新人がいつかないため、負担だけが増大し、多くのサーバーは気力が尽きたときにその店を去ることとなります。そして店の魅力はどんどん失われ、消費者はお気に入りの店を一つ失うこととなります。

 すかいらーくがMBOに踏み切った主な理由は業績不振ですが、その原因の大部分を占めるのは、昨今のパート賃金の相次ぐ賃上げによるものです。そのために不採算店の大部分を閉鎖せざるを得ず、それが株主の同意を得られないと判断したため、意思決定の迅速化を図るために今回のMBOに踏み切ったわけです。

 飲食業は他の流通業とは違い、マンパワーに依存する割合が大きく、効率を上げようとすれば、即サービス低下に直結してしまいます(ドリンクバーがいい例です)。サービス力を上げようと思って価格を上げれば競争に負け、逆に下げれば、サービス低下につながってやっぱり負けてしまいます。しかし、時給制では従業員のサービス力を評価し、正当な賃金を支払うことは不可能に近い。

 日本でも、チップ制、もしくはチップ制に変わる制度の導入が必要なのかもしれません。

 思い起こせば36年前、すかいらーくの1号店で導入しておけば今頃は一定の評価を得、チップも市民権を獲得していたかもしれませんが、もう後の祭りですね。必要な経費を削って窮地に陥るいい反例としましょう。サービスは“0円”ではないのです。

 このままでは近い将来、日本の飲食業は間違いなく壊滅します。

サービスは0円ではないかな?と思った方はクリック!(ブログランキングへ)

| | コメント (0) | トラックバック (0)