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2006年11月 6日 (月)

減価償却は減税にあらず

何でこれを減税と書く。

企業減税、5千億円規模 政府、減価償却見直し方針

 政府は07年度の税制改正で「減価償却制度」を見直して企業向け減税を実施する方針を固めた。減税規模は税収動向や予算編成をにらんで年末までに詰めるが、現在は初年度だけで5000億円規模を想定。経済成長を重視する安倍政権として、企業減税を先行させる姿勢を鮮明にする。ただ、個人には定率減税全廃などで負担増を求める時期だけに、企業減税の是非が議論になりそうだ。

 減価償却は機械装置や建物の価値が年々目減りする分を経費として損金算入できる制度。企業にとっては減価償却費が増えれば課税所得が減り、減税効果がある。

 現在は、古くなった設備でも一定の価値があるとみなして減価償却の限度を95%までと定めている。しかし、経済界から「欧米並みの全額償却」を求める声が強く、政府は100%までの組み入れを認める方針だ。新たに認められる5%分は、5~7年程度で償却させる方向で検討している。

 また、経済界は設備の償却期間も「欧米より年数が長く、毎期の損金算入額が抑えられている」と短縮を要求。政府は設備使用の実態調査を踏まえハイテク関連など一部の設備の償却期間を短縮する方向だ。プラズマディスプレーなどの生産設備の償却期間は8~10年だが、5年程度に短縮することを検討する。

 検討中の5000億円規模の減税は、すでに実施されている研究開発・情報技術(IT)減税の約7000億円に匹敵する規模。08年度以降は、法人実効税率の引き下げなどさらに大型の企業減税が検討されている。

 一方で、個人所得に対しては、定率減税の全廃など小泉政権下の02~06年度の税制改正で3.9兆円の大増税になった。来夏の参院選後は消費税増税も検討される見通しで、企業減税の財源が個人への増税で賄われている構図が続きそうだ。

2006年11月06日10時04分 朝日新聞

 企業会計には一般原則として

  1. 真実性の原則
  2. 正規の簿記の原則
  3. 資本取引、損益取引区分の原則
  4. 明瞭性の原則
  5. 継続性の原則
  6. 保守主義の原則
  7. 単一性の原則

 があり、費用に関しては発生主義の原則、費用収益対応の原則があります。

 一般的に企業は「ゴーイングゴーサーン」が基本となるので、高額な固定資産(本社ビルや工場設備)を購入した場合、その効果が発生する期間に振り分けて費用を計上する必要(費用収益対応の原則)があります。

 そういった必要性を受けて出来たのが減価償却という制度です。減価償却では税法に定める法定耐用年数に応じて、所得価格の95%まで償却(費用配分)することができます。方法としては、10万円以上の購入価格の備品、設備を固定資産に計上、各資産ごとの法定耐用年数によって、定額法、定率法のいずれかによって固定資産を減額し、費用に組み入れていきます。

 しかしながらこの制度は、償却という利益留保を伴う性質上、“法定耐用年数”という税法上の制約を受けており、実際の企業実態を必ずしも正確に反映したものではありません。10年~20年使用した固定資産が所得価格の5%で引き取られるなんてことはありえない。逆に廃棄コストがかかる場合の方が実際には多いのです。

 こういった事実を反映して法定耐用年数ではなく、自社基準によって償却を行なう企業も存在しますが、その場合は償却分の50%(法人税相当分だったかな)を税金として徴収されてしまいます。

 そして昨今、生産技術や時代の移り変わりの変化が激しくなり、固定資産の入れ替えのスピードが速くなったことにより、この法定耐用年数の見直しが必要となってきました。

 なぜなら、飲食店目的の木造モルタル造ならば法定耐用年数は20年を設定していますが、20年間変わらず商売できる飲食店などは現在ほとんど存在しません。この場合、消費者の嗜好の変化や客層の変化に対応して、数年ごとに一部改装、もしくは建替(スクラップ&ビルド)を行なうわけですが、そのたびに法定耐用年数による除却分以上の固定資産の目減り、つまり除却損が発生し、その都度企業収益(税引前当期純利益)を圧迫して不健全な会計処理となってしまいます。

 これは飲食店であれば数千万規模ですが、これが工場設備だと数億の規模となり、扱いは特別損失扱い(損益計算書では経常利益の下、税引前当期純利益の前)となるので企業成績に現れにくく、不健全な財務体質が見過ごされる要因にもなります。結局のところ、固定資産除却損を計上することも節税の一種であり、期間配分するか、残りを一気に償却するかの差でしかないのです。

 つまり、現在の法定耐用年数は時代の変化にまったく対応しておらず、企業の財政状態や経営成績に関して真実な報告を要求する“真実性の原則”、リスクを見越した保守的な会計処理を要求する”保守主義の原則”、収益と関連する費用を対応させることを要求する“費用収益対応の原則”に対する重大な違反であり、単に税額を決定する為だけに存在するようなものなのです。

 このように考えれば、減価償却費制度の見直しは時代の要請に従ったものであり、けして減税という性質のものではなく、企業の経営が健全化されることにより正しく期間収益が反映され、それによって財務諸表の明瞭性が確保されることにより、株式市場も健全化し、取引もますます盛んになるでしょう。

 また、この好景気の時期に正しい減価償却制度を導入することは、収益に応じた費用配分を促進し、企業の将来の適切な設備投資を促進させ、日本企業の国際競争力の強化や、収益力の向上をもたらし、好景気の持続をもたらすでしょう。

 したがって、今回の朝日新聞の見出しは非常に不適切なものであり、企業に対して不当な誤解を誘発し、企業経営の健全な発展と収益力の向上を妨げ、日本経済の崩壊を狙った悪質なものであることを断言します。

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参考サイト

企業会計講座 企業会計の基礎知識 あずさ監査法人HP

減価償却 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

キャッシュアウトしない節税対策 All About

建物の耐用年数表 川島会計総合事務所

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コメント

ご意見御尤もです。

あえて反論させていただくとすると、財務会計では税法所定の償却方法は関係なく、企業の実態を適切に反映させる減価償却が望ましいとし、公表財務諸表には企業独自の償却手続きが可能です。ただ税務では損金と認められないため企業がその煩雑さから税法の所定の方法で償却しているだけですね。
その意味では企業会計原則どおりに企業は減価償却をすればよい(税金計算に係る損金は所定の方法でやるように言っているだけ)。企業会計原則違反は企業の怠慢だという税務当局の反論もできそうです。きわめて詭弁だと思いますが・・・。

あと朝日の記事の企業減税というのも間違っていますね。正確には税の繰延という表現が正しいと思います。確かに税法上の恩恵とはいえますが、国民を明らかにあおっています。

投稿: horrible | 2006年11月 6日 (月) 15時30分

ご意見ありがとうございます。
フリーターが増えたから格差社会と煽ったり、今度は会計の適正化を減税と煽ったり、朝日新聞はどうしようもないですね。
一度でいいから仕事に追われるエリートサラリーマンと、収入より自分の時間を優先するフリーターの対比をしてほしいところです。

投稿: takayuu | 2006年11月 6日 (月) 23時23分

 takayuuさま。
 Wikipedia はリンクしておりません。ですからその記事が反映されておりません。
 私も以前はやってみましたが、うまくいかないので止めました。
 左翼の青臭い学生辺りが書き込むことが多く・内容も片寄っているという理由もありましたが。

投稿: 柳生すばる | 2006年11月 8日 (水) 00時28分

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